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最高裁判所第三小法廷 昭和25年(れ)180号 判決 1950年6月06日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人鈴木重一の上告趣意について。

麻藥取締法にいわゆる「麻藥施用者」とは、同法第二条第九項の規定に従い医師、歯科医師又は獸医師に限られるのであるが、同法中の「施用」という言葉は、他人に対するばかりでなく、自己の身体に対する場合をも含むものと解すべきである。しかるに同法第四条第三号(論旨は第三條第一項を挙げているけれども、問題とされている判示第三の(三)の所為に対して原判決が適用したのは第四条第三号である)は、「何人も」「ヂアセチールモルヒネ及びその塩類並びにこれらを含有する一切のものの施用をしてはならない」と規定しているのであるから、これは医師等いわゆる麻藥施用者以外のものが、自己の身体に対して右の麻藥を施用することをも禁止するものと解しなければならない。それ故に被告人が塩酸ヂアセチールモルヒネを自己の身体に注射したことに対して、原判決が麻藥取締法第四条第三号を適用したのは正当であって、所論のような違法はなく、論旨は理由がない。

よって旧刑訴第四四六條に従って主文の通り判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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